あなたは隠れて見えないところで
鼻をほじったり欠伸をしているでしょう
ばれているんですよ でもそれはね
分厚いお山にトンネルを掘っている
こととなんら変わりはないのです
もうすぐ春だよ
あたなは気配をうかがいながら
くしゃみやおならをしていることでしょう
気付いているんですよ でもそれはね
海の底深く眠る文明を拾う
こととなんら変わりはないのです
もうすぐ春だね
iPhoneのメモに残っていた歌詞をそのまま貼り付けた。この歌は何年前のものだろう。
2015年12月6日に作ったらしい。
その頃の僕は新潟を離れて長野の佐久平というところで生活を余儀なくされていた。
心身ともに弱りきっていた僕に、金沢の友人から歌付きのメッセージが来た。
「散歩」というタイトルの歌。
歌ができたから聴いてと。
彼は新潟で出会った歌うたい。金沢で歯医者を営んでいる。今まで出会って来た歌うたいの中ではじめて天才だと思った人。
そんな彼から励まされた感もあり、また歌を作り始めることになる。
SoundCloudという媒体で二人して歌をアップし続けた。誰でも無料で聴ける媒体。
僕たちは音楽に価値をつけることなくHAKOという名前で活動を始めた。
ハナクソ
アクビ
クシャミ
オナラ
の頭文字をとっている。
生活の音のように何気なく歌も作っていこうという気持ちの顕れである。
周りの歌うたいの人たちからは敬遠されていた。
あいつら馬鹿じゃないのと思われていたはずである。
しかし僕たちからしてみれば、そんなやっかみを気にすることなく粛々と作り続けて、孤高を目指したのである。
今思うとおよそ500曲入っているアルバムを作り続けたということになる。
10曲入りだとしても50枚近いアルバム。
毎日作るのを目標にしていたものだから、時間はゆっくりと濃密に流れていた。
iPhoneを利用しての簡単な録音がほとんどだったので、音圧は低い。
粛々と続けていくうちに、何だか崇高な気持ちにもなったり、何にも出てこない日は遊びに走ったりと目まぐるしかった。
ただ、これだけは言える。
歌を作るスピードは抜群に早くなった。
筋トレのようなものである。